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その3 辛いものについて
世の中には2種類の大人が存在する。甘党と辛党だ。私は究極に辛いもの好きなので甘党の気持ちなんか分からない。まったく、全然、ほんの少しもである。…いや、和菓子好きの気持ちは年に1週間ほど分かる日もある…お正月とかに上品なお菓子を貰ったりすると「お、甘いものも捨てたもんやないで」とつい思う程度だが。
でも、それ以外は無理だ。反対に辛いものは下品なくらい辛くても食べれてしまう。この間も九州に行った時のことだ。韓国人の人が経営する焼肉屋で「超激辛の味噌たれ」をつけて食べるという店に劇団のメンバーと行った。
さっそく注文したら、超激辛の味噌は黒っぽい色のコチジャンの中に醤油付のにんにくをみじん切りにしたものを絡めて、唐辛子をふんだんに砕いて混ぜたという代物だった。さすがの辛いもの好きの男どももこれには「あかん、舌が…しびれる」とか言い出し、人間の食うものではないという結論に達した。
だが、私はその味噌をおかずにごはんをばくばく食べた。辛すぎて美味しいというにはあまりにも品のない味だったが、メシにはピッタリだぜと思ったからだ。
「ふっこさん、それ体に悪いですよ」と誰かが言った。実際に気持ち悪くなったり、ひどい下痢になったメンバーもいたようだが、私はなんともなかった。食って食えないものじゃないのにどうした?という感覚でしかなかった。
それから、この間テレビに出演していた時のことだ。出演者5人に対して「わさび巻き」が配られ、食べることになった。巻き寿司なのだが、海苔の代わりにわさびがご飯の周りにべったりついてるというおぞましいものだった。
番組中に食べるように指示されたのでみんな口に入れたのだが、ひどいものだった。「おいしい、けっこうさっぱりしてる」とコメントした人もいたが、その直後にみんな気分が悪くなり、本番中にフロアにいた若いスタッフが牛乳を買いに走るという一コマもあった。なんでもこういう香辛料のきつ過ぎるものを食べて気分が悪くなったら、牛乳を飲めばいいそうだ。出演者のひとりがそう言いだしたのだが、元厚生省の役人だったので信憑性があり、みんな急いで飲んだ。しかし、この時も私だけが「なんで?そんなに気持ち悪いの?」ときょとんとしていた。
単に丈夫なだけ?という説も否めないが、まぁ辛いものには滅法強いのが私の特性なんである。子供の頃はカレーに卵を混ぜて、ソースをかけないと食べられないような香辛料嫌いで、寿司屋に連れていかれてもわさび抜きのものしか食べられなかったのだから、人間の味覚というのは変わるものである。
私の場合はタイに旅行に行った時になにか腑に落ちるものがあって、とことん食べられるようになったというのが本当のところだ。食の好みというのは一日にして変わるというのが私の自論でもある。
さて、そんな辛いもの好きの私の「金の斧」は大阪は鶴橋にある「豊田商店」のチャンジャ。これはもう最高の味だ。鱈の内臓を韓国味噌でつけたものだが、品質、味、ともにここのチャンジャは世界一!辛味の中にほんのり魚の甘さがあって、もうたまらない逸品である。
辛味、ゲテモノ嫌いの人もきっとこの味を試せば一日で変わるはず、騙されたと思って食べて欲しい。きっと食の世界観が変わるはずである。
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わかぎえふ(Wakagi F)
役者・作家・演出家。2つの劇団「リリパットアーミー||」と「ラックシステム」を主催。作、演出、美術、出演を兼ねながらリリパットアーミーではコメディ、ラックシステムでは大阪弁のシチュエーションドラマを手掛け、交代で企画、上演を続けている。また、最近では独自の演出法からワークショップの依頼も多く、演劇関係者や劇場、企業などでも講師として教えている。エッセイストとしても著書多数。月産100枚以上の原稿を書くことで業界では有名。連載は週間、月間など会わせて10本以上。最近は小説、テレビ、ラジオの脚本も手掛けている。古典芸能やバレエ、映画、絵画への関心も高く、その方面でのテレビ出演も多い。 |
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