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貫徹について
本棚には、小説などは少なく、どちらかというとHOW TO 物の本が多かった。コンピューター関連の本、整体など東洋医学の本、英語学習の本、動物や植物の飼い方の本、宗教関係の本…。それらの本を前にして、俺はいつも、結局どれもこれも中途半端になっているなあと悲しくなった。どうも途中で飽きてしまう。諦めてしまうのかも。そして新しい物にすぐに飛びつき、そのことに夢中になってしまうのだ。たまらんなあと、いつも思う。
第4話:塾長
S塾と言う塾に、中学生時代通わせてもらっていた。そこには、木下先生と日比先生と言う二人の塾長がいた。木下先生は最強に恐い数学の先生、日比先生は最高に不思議な理科の先生だった。さて、その塾で生徒にとっても先生にとっても大変な時期がある。夏合宿だ。その一週間は、全員ほとんど眠らずに勉強に集中する。
しかし、そんな中にも、一応楽しみもあった。夜中、勉強していると一人ずつ呼び出され、提灯を渡され肝試しに行くのだ。山の中を歩かされるのだが、途中に先生方が化けた妖怪などがいて脅かされる。まず、木下先生のおっそろしい話を休憩時間などに聞かされて、日比先生がプロデュースした肝試しにかり出されるという図式だった。とにかく、マジで恐かった覚えがある。
それから何年かして、俺は大学生となり、なんとそのS塾のアルバイト講師として雇ってもらうことになった。夏が来て、俺もあの合宿についていくことになった。そして俺は肝試し委員に任命された。お化け達に扮装するのだ。何とも感慨深い物を感じながら、俺は生徒達をどのように怖がらせるか真剣に考えた。
そして当日、山の中に潜むお化けに扮するアルバイト講師の三人(俺も含む)は、トランシーバーを持たされ、それぞれ山の中に消えていった。木々が、月明かりをさえぎり、真っ暗で何も見えないところを小さな懐中電灯一つで進んでいく。俺は、これほどお化け役が大変だったとは夢にも思わなかった。お化け的な怖さだけじゃなく、マジで熊とかイノシシが出るんじゃないかと言う怖さが立ち、震えそうになった。真っ暗な中、30分ほど経つとトランシーバーからようやく生徒を送ったぞと言う本部にいる木下先生の声が聞こえてきた。生徒達が順々に歩いてくると、先程まで感じた山の中での怖さという物は消えた。
そんなこんなで3時間程たったとき、時間にして夜中の2時ぐらいだろうか、提灯を待たない何かが、こっちに歩いてくるのを察知した。確実に生徒じゃない。こんな夜中に、山の中を誰が?俺は、戦慄を覚えた。どんどん近づくにつれ、どうもそれが足を引きずって歩く、古くさい服を着た男であることが分かった。そいつは、山道ではなく、明らかに山の中からやって来た。そして、俺がじっと見ていると、10メートルほど離れたところにドサリと座り、なにやら新聞紙を広げ始めるのである。そして弁当箱の様な物を取り出し、がつがつと何かを食べ始めたのである。風の音と虫たちの鳴く声ぐらいしか聞こえない真っ暗な山中で、夜中の2時に弁当を食べる。ガツガツという音が奇妙に鳴り響く。そいつは、食べ終わるとまた立ち上がって足を引きずりながら山の中へ消えていった。
ほんの5分ぐらいのことだろうが、男は相当長い時間に思えた。思い出したようにトランシーバーで、目の前で起こったことを連絡した。本部もアルバイト講師のお化け達も気持ち悪がった。軍服を着た変な男を見たという報告もあった。そんなおそろしい経験をしながらも、俺は無事夏合宿を終え、帰ることが出来た。
それから一ヶ月ほどしたある日、日比先生と授業について話していると、日比先生がにやつきながら、あの山男は実はワシやと、うち明けた!俺は、そこまでして人をおどかし、しかも一ヶ月以上黙っている日比先生の奥ゆかしさに、脱帽した。
その翌年も同じように俺がお化け役をしていると、勿論だまされんぞと思いながらだが、山の頂上付近で時々、5分間隔ぐらいだが、カーン、と言う妙な音が聞こえたのだった。俺は、不規則などう考えても不自然な音を気にしながら肝試しを続けたのだった。それから一ヶ月ほどしたある日、やはり日比先生はにやにやしながら、あれはワシやとうち明けたのだった。
俺は、奇をてらわないで地道でありながらも奇抜なアイデアをやり抜くその執念に、またもや脱帽した。それ以来、俺はこの先生を師匠と心の中で呼ぶことにした。 |
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腹筋善之介(Fukkin Zennosuke)
1989年1月、惑星ピスタチオを結成、座長となり、1990年1月、惑星ピスタチオ旗揚げ公演から10年間にわたり公演をうち続け、2000年に解散。NHK朝ドラ「オードリー」に、ハラカン、ハラキンの二役で出演。香港映画「ホークB計画」、1年間のワークショップ「SCS」の講師、西日本NTTのCM、G2プロデュース「天才脚本家」など、様々な分野に進出。
関連サイト:ホークインターナショナル(http://www.hawk.jp/) |
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