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COLUMN INDEX
▼no4
貫徹について

▼no3
不変について

▼no2
限界について

▼no1
服従について

  俺は、人生の中で日記を何度も書こうとしていつも断念している。もう数え切れないぐらい。日記を書くのに向いていないのだ。でも、日記を書き続けたい気持ちはある。そんな、思い立ちと断念のほこりかすが、溜まりにたまって俺の右腕を動かすことになった。
今まで書き損ねた俺の日記のようなものを。
 俺はさらに大声を張り上げた。騒ぐワークショップ生達を、静かにさせるために。すると彼らは口を閉じて、俺の大声に聞き入った。服従したのだ。服従。服従する。服従させる。服従させておいて、服従っていやなニュアンスの言葉だなあと思ってしまう。いや、今の時代がそう感じさせるのだろう。
 犬の服従は、服従するという本能を持ちあわせているので、本当の服従ではないのかもしれないが、飼い主によく服従する犬は、美談になったりする。人間にも、忠実に服従した人たちの美談は、たくさんあるか。
 そうか、人間の美談というものを考えたら、その服従には忠実さや謙遜さが含まれている。そしてそれこそが美しさを放つ。俺はそんなことを考え、授業中ニヤリとした。

第一話:服従について

 二階のベランダの片付けをしていたら、突然アシナガバチ一匹が逃げていった。
よく見ると、ハチの巣が落ちているではないか。
俺は、今の一匹は女王蜂だったのかなと思いつつ、その巣を手に取ってみた。いるではないか、幼虫たちが。10匹以上いる。
俺は、捨てようかどうか迷ったが、その時、最高に楽しいことを思いつき飼うことにした。
 その日から、俺とハチの巣との共同生活が始まった。

 俺は、毎日ハチの巣の中の住人達に、爪楊枝で餌を与え続けた。
3時間おきに餌を与えた。新幹線の中でも出張先でも、竹筒のようなものにハチの巣を入れて持ち歩く。餌も、肉だったり、蜂蜜だったり、色んなものを爪楊枝の先につけて与えたのだった。
数日後には、幼虫によって好き嫌いがあるのを発見し、人間の子供と同じだなあと、にやついたりした。

 そんなある日、竹筒を開けると、なんと!一匹が成虫となっているではないか。
執念で育て上げたアシナガバチの成虫。大喜びの俺は、1ヶ月前思いついた最高に楽しい事を思い出した。
が、そんな思いも一瞬で吹き飛んでしまった。餌をやろうとすると、その成虫は威嚇するのだ。
羽を広げ、お尻の先についている毒々しい針を出したり入れたりするのだ。
手塩にかけて育てたアシナガバチが。
俺の、頭の周りをくるくる回ったり、男の肩に止まったり、何らかの危険があるときは身を呈して救ってくれたり、一緒に山に登ったり、耳たぶに巣などを作らせてあげてハチの巣イヤリングにしたり、そんな最高の思いが、一瞬で吹き飛んでしまった。
その日から、幼虫に餌をやるたび、ハチに威嚇されなければならなかった。
 責任も感じつつ餌やりを続けたものの、成虫が5匹になったとき、俺は、ようやく飼うのをやめることにしたのだった。
腹筋善之介(Fukkin Zennosuke)

1989年1月、惑星ピスタチオを結成、座長となり、1990年1月、惑星ピスタチオ旗揚げ公演から10年間にわたり公演をうち続け、2000年に解散。NHK朝ドラ「オードリー」に、ハラカン、ハラキンの二役で出演。香港映画「ホークB計画」、1年間のワークショップ「SCS」の講師、西日本NTTのCM、G2プロデュース「天才脚本家」など、様々な分野に進出。
関連サイト:ホークインターナショナル(http://www.hawk.jp/
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